_movie 『コードネームは孫中山(原題:行動代號:孫中山)』



台湾ってほんまに上手いよね、こういう作品を作るの。
貧乏でちょっとあほな高校生のお話し、みたいなの。
あほらしすぎて見ながらすごく笑ったし、
でも芯にはしっかりとしたものがある。
おかしいからこそその根底にある
逃れられない悲しい現実にもぐっとくる。

わしも大好きな『藍色夏恋(藍色大門)』の
易智言(イー・ツーイェン)監督作品。
長編作品を撮るのはまさに『藍色〜』以来とのこと。
調べたら『アバウト・ラブ(関於愛)台北篇』も撮られていた。
確か、チェン・ボーリンや伊東美咲が出てた作品よね。
台北編には加瀬亮が出てたような。
でもあれは異なる監督による3本のオムニバス作品だった。
そんな易監督の久しぶりの作品となれば
期待度が増すのも当然というわけで。

学級費も払えないほど貧しい男子高校生4人組。
ある日、体育倉庫に今は使われていない
孫中山(孫文ですね)の銅像を発見、
それを盗んで売り飛ばしお金に換えようと計画した。
ある日、同じことを考えている人間がいることが発覚して…
みたいなお話。



以下、ネタバレあり。




孫中山の銅像を盗み出す手口が計画的なのだけど
準備段階から色んな人にバレバレだし、
例えうまくいっても即行で足がつきそう。
そういうところも「あほなDK」感が漂ってて面白い。
主人公の阿左以下、全員がわりとぼんやりさんで
大それたことをしようとしているのに緊張感ゼロ。

途中、同じように銅像を盗もうとしている小天と出会い
仲間になろうと誘うのだけど結局裏切られて
準備していた道具一式、顔バレしないための
青髪ガールのお面ごとパクられてしまって
なのにそれでもまったくへこたれない。
同じお面を買いそろえ、決行日にそれとなく合流。
一緒に銅像を運び出し、一緒に守衛(ジョセフ、
この役柄がかなり面白い)を脅かし、
運搬用に車に積むまでして
そこで小天たちは人数が多いことに気付いて(今!!?)
車の奪い合い。
結果的には阿左が運転席を奪い取って
見事、銅像を盗み出すことに成功するのだけど
小天は諦めずどこまでもどこまでも走って追っかけてくる。
見かねた阿左は車を止めて降りたところ、
小天が運転席を奪い取ろうとする。
銅像が途中の道に落ちてしまったことを知ったあとも
探して一人で持ち上げようとする。
阿左が手伝おうとしても彼の手を払いのける。
そのままとっくみあいのけんかになる。

小天のこの執念こそが肝だ。

彼の家もとても貧乏。さらに父親にはDV癖もある。
阿左たちももちろん貧乏なんだけど
貧乏自慢をし合うほど貧乏を受け入れている感がある。
だけど小天は違う。
このままじゃ絶対に嫌だと心の底から思っている。
状況に負けず、自分でお金を作って
現状から抜け出そうと必死さが彼の目から伝わってくる。

やってることはとてもあほなだけに
貧しさというどうにもならない現実の厳しさが
より鮮明になる。

この事件はテレビでニュースになるほど大問題になって
彼らは学校で反省文を書かされる。
なぜこんなことをしようと思ったのか書けという。
それならどこから書けばいいのか、
自分がなぜ貧乏なのか書けばいいのか。
僕は親の会社が倒産してからだ、
僕はおじいちゃんの代からずっと貧乏、
僕はひいひいおじいちゃんの代から。
そこでも皆でいつから貧乏なのかの言い争いになる。

そこで小天が発した、
そんなのでいいわけがない、
というような言葉もどきりとした。
代々貧乏だから、親が貧乏だから、
自分も貧乏でいいなんて絶対いやだと。

全体を包むお気楽な空気感があるから
小天のぴりりとした言葉が冴えていた。

面白かった。見られて良かった。
あほすぎる場面ではよく笑わせてもらった。
ジョセフのシーンも。

今後の彼らに幸多からんことを!



この主人公・阿左が前部署の先輩N村さんに似すぎてて
無性に親近感を感じて止まなかった。

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